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福岡地方裁判所 昭和43年(む)819号 決定 1968年10月29日

被告人 松崎守

決  定 <被告人氏名略>

右の者に対する窃盗、強姦被告事件について、昭和四三年一〇月二五日福岡地方裁判所裁判官川上孝子が為した勾留更新決定に対し福岡地方検察庁検察官吉岡卓から適法な準抗告の申立てがあつたので当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件準抗告の申立ては之を棄却する。

理由

本件準抗告申立ての要旨は「原裁判は之を取消す」というのであつて、その理由は別紙のとおりである。

記録によれば、本件被告事件について、昭和四三年一〇月二五日福岡地方裁判所裁判官川上孝子が勾留期間の更新決定を為したことが明らかである。そこで記録を検討するに、本件被告は、窃盗罪により逮捕中、昭和四三年六月二七日福岡地方裁判所に公判請求され、いわゆる求令状により同日勾留状が発付され、公判審理中同年七月一二日にこれより先に既に在宅のまま審理中であつた被告人に対する強姦被告事件にこれを併合する旨の決定がなされ爾後併合審理中同年九月二五日右強姦被告事件について勾留状が発付執行され、前記窃盗被告事件に関する勾留状は同月二八日失効した事実が認められる。そうすると本件強姦被告事件について、実質上前記併合決定の日から右窃盗事件の勾留の効力が及んでいるものと解すべきであるから強姦事件についても既に二ケ月以上実質的には勾留されているものといえるのである。従つて右強姦事件について勾留期間を更新する場合には一ケ月毎に之を為すことが妥当である。又本件について検察官は右窃盗の事件とは別個の新たな窃盗事件をも右強姦事件と併せて勾留期間更新決定の請求をしているけれども、これは右強姦事件と一体を為すものとして請求されたものといえるからその勾留期間の更新は右強姦事件と同一に取り扱うのを妥当と解する。

従つて右強姦事件と窃盗事件とを併せて昭和四三年一〇月二五日に勾留期間の更新決定をした原裁判は妥当であり検察官の請求は理由がないので刑事訴訟法第四三二条第四二六条第一項後段により本件準抗告の申立ては之を棄却することとし主文のとおり決定する。

(裁判官 藤田哲夫 池田良兼 蜂谷尚久)

準抗告申立書<省略>

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